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オフィスの中は外より明るい?
オフィスワーカーが陥る錯覚として、
オフィスの中から外を見ると、
よく晴れた日でもオフィスの中の方が明るく見えることがあります。
室内は外より暗いということは、
頭で分かっていても、感覚的には、
朝から夕方まで室内にいると、ずっと明るいところで働いている感じがします。
これは人の目が、焦点を合わせるための巧妙な技術を使っているからで、
計測してみれば明るさの差は歴然です。
光の強さの単位をルクスといいます。
晴れた日の屋外では、光の強さは1万ルクス以上です。
一方で、一般的なオフィスの照明は机の高さで500ルクス程度になるように調整されています。
曇りの日でも、窓側では5000ルクスを超えます。
500ルクスは、真っ黒い雲が覆う大雨の日の窓側と同じくらいの光の強さです。
オフィスの照明設計は、知的作業をはかどらせるために500ルクスに設定されていますが、
生体リズムを整えるという視点では、恐ろしく暗いのです。
光(明るさ)を感知することで体内時計は調整される
ヒトは24時間より長い体内時計を持っています。
メラトニンはこの体内時計のズレを調整するのに一役買っており、
光を感知することによって、その分泌量が調節されています。
メラトニンの分泌に関わっている組織が脳の視床下部の中にある、
視交叉上核という神経核で、この部分をマスタークロックとよんでいます。
マスタークロックからの指令を受けて、
筋肉や臓器などの実行部隊に具体的な指示を出すのが、
視交叉上核の後ろにある松果体です。
体内時計は、光を感知したときがスタートであり、
時間が経過して、周囲が暗くなってくると、
マスタークロックは松果体に命令を出し、メラトニンを分泌させます。
更に時間が進み、そのまま24時間を回っても体内時計は進んでいきます。
ここで日が昇り、
マスタークロックが光を感知すると、
松果体がメラトニンの分泌を止め、
体内時計が修正され、ここから新しい1日の時間がスタートしていきます。
このようにしてヒトは1日を24時間で過ごすことができているのです。
このマスタークロックは暗くなると松果体にメラトニンを分泌させますが、
その『暗くなる』の基準は500ルクスです。
500ルクスより暗くなると、メラトニンが分泌され始めます。
オフィスの明るさは500ルクス程度ですので、
1日の大半を暗い中で過ごす生活では、
マスタークロックは混乱してしまうため、
仕事を始める前に、しっかりとメラトニンを減らしておくことが、
高いパフォーマンスを発揮する上では大切になります。
体内時計のズレを調整できるリミットは?
マスタークロックが体内時計のズレを調整できる時間は、起床から4時間までです。
つまり、6時起床の場合、
調整のタイムリミットは10時ということになります。
光を浴びるというと、
日光浴のような場面をイメージしてしまいますが、
マスタークロックに光を届けるためには、
何も全身に光を浴びる必要はありません。
朝、起きた時に、窓側で過ごすだけで
マスタークロックに光を届けることができます。
自宅の日当たりが悪かったり、
通勤で屋外に出る時間が少ない場合は、
出勤した後、窓から外を眺めてみるのも良いでしょう。
直接、日に当たらなくても、光を見るだけで効果はあるのです。
光を見る時間は長いほどメラトニンの分泌を減らせますが、
毎朝の習慣にすることができれば、
5分程度の短い時間でも、メラトニンを減らすことができます。